「引かれ合うか…」

そう呟くように言ったベアハングは、フッと笑うと、麗華とは別の方向に歩き出した。

「俺は、そうは思わない!」

ベアハングは歩きながら、自らの胸を拳で叩いた。

「オウパーツは、引かれ合うのではない!奪い合うのだ」

ベアハングは、歩く速度を上げた。

「麗華よ!お前のオウパーツは、頭にある為に、洗脳されやすかった。お前の言葉が、オウパーツの真意に近いのだろう」

そして、胸をかきむしると服が破れ、オウパーツが剥き出しになった。

「しかし!我が胸につくオウパーツは、違う!常に、我が心臓を鼓動よりも熱く叩き、こう告げている!」

ベアハングは、にやりと笑った。

「王になれと!人間の王になれと!オウパーツを集め、麗華の仮面だけは、被らなければ!我は我のままで、王になれる!ははは!」

そう口走るベアハング自身も気付いていない。

その思いも、本当に自分自身が出した答えなのか…。

純粋に、力のみを与える月影の力と違い、オウパーツは精神に干渉した。本人さえ気付かないレベルで。

「まずは、ジェース!貴様からだ。組織を裏切ったお前を!八つ裂きにしてやるわ!」





「うん?」

理事長室までカレンに案内されたジェースは、妙な気配を感じ、今歩いてきた廊下に振り返った。

「どうした?ジェース」

ティフィンが、ジェースの視界の中に飛び込んできた。

「いや…何でもない」

ジェースは、首を横に振った。

「じゃあ…あたしは、ここまでだ」

理事長室をノックしょうとして、躊躇ったカレンは、ジェースの背中に声をかけた。

「理事長に理由を説明したらいい」

「あ、ああ…」

廊下の先を見ていたジェースが、拍子抜けしたようにカレンの方を見た。

「わざわざ有り難うございました」

ティフィンは、カレンの前まで空中で移動すると、頭を下げた。

「いや…大したことはしていないから」

カレンは少し照れながら頭を下げると、歩き出した。

ジェースとティフィンの横を抜け、数歩歩いてから、カレンは足を止めた。