だけど実際,黙っているのは本当に辛かった。


紫藤の隣で幸せそうに笑うお母さんを見るたび,胸が張り裂けそうだった。


あの日の朝は
寝坊して朝食も摂らずに
そのまま家を飛び出した
ということになっている


あたしの演技が上手かったのか,紫藤は何の疑いもせず「給食時間までキツかっただろー」と笑っていた。


きっとあたしにあの醜態を見られていないと思って安心したのだろう。


そんな紫藤を見ていると,あのとき写真でも撮ってやれば良かったと,少し後悔したりもした。