〜諒side〜


「諒君,もう上がっていいよ。延長してすまなかったね」

「いえ…お疲れ様でした」


午後10時,バイトを終えた俺は急いでマンションに帰った。


バイト初日


店長の智之(トモユキ)さんも奥さんの千春(チハル)さんも気さくでとてもいい人だった。


接客業はどうも苦手だが,注文を取って運ぶだけならまぁなんとかなる。


とは言っても,これだけたくさんお客が来るのに,従業員が店長と奥さんと麻木さんという若い女の人の3人だけだなんて…。


このバイトを俺に勧めてきた大学の先輩の話によると,普段は中学生の店長の子供たち2人も一緒に店を手伝っているらしい。


しかし,ワケあってその子供たちが店を手伝えなくなったため,急きょバイトを募集していたというわけだ。