〜諒side〜

穣吏は二日間,ひどい高熱にうなされ続けた。

そしてようやく熱も下がり,意識を取り戻したとき


穣吏はあのとき俺に向かって言った事をすべて忘れてしまっていた…


高い熱のせいで,倒れる前の記憶だけが欠けてしまったらしい。



《紫藤に復讐してやる》


穣吏はあのとき,確かにそう言った。


そして俺はそれをちゃんと止めることができなかった…


親父の死がニュースで流れたとき,俺も穣吏と同じことを思ったから…はっきり『復讐なんかやめろ』とは言えなかったんだ。


だけどやっぱり俺は穣吏に復讐なんて馬鹿なことはしてほしくなかった。


そんなことしても穣吏の母親も俺の親父も生き返るわけじゃない。


今はまだ,普通の生活をさせてやるのは無理だが,数年後,事件のほとぼりが冷めれば,ちゃんと普通の生活をさせてやりたい。


そして

好きなヤツと幸せな人生を歩んでほしい


復讐なんか絶対にさせるわけにはいかない。


だから,穣吏があのときのことを忘れてくれてホッとした。


復讐なんか誰も望んでないのだから