帽子を深くかぶり,あたしは諒と外に出た。


久しぶりの外…


空ってこんなに綺麗だったっけ?


風ってこんなに気持ち良かったっけ?


あたしはゆっくりと歩き出した。


諒は黙ってあたしについて来る。


途中,たくさんの人とすれ違ったが,誰もあたしが紫藤穣吏だとは気付かなかった。


それを見て,諒も安心した様子だった。


どこに向かうわけでもなく,あたしたちはただ道をひたすら歩いた。


歩いて

歩いて


そして


「わぁ…」


オレンジ色に染まる鮮やかな夕日に,あたしは心を奪われた。


「夕日か…」


諒もあたしの隣でジッと夕日を見つめる。


2人の顔がオレンジ色に染まる。


「少しは気晴らしになったか?」


諒の問いにあたしは大きく首を縦に振った。


「そっか。なら良かった」


諒は優しく微笑み,夕日が沈むまでずっとそばにいてくれた。


「ありが…とう…」


あたしは小さく呟いた