お母さんの再婚後,あたしたちは紫藤の家で暮らすことになった。


2人きりの貧しい生活から一転,大きな家での裕福な暮らしはあたしたちにとって楽園のように思えた。


「これからはお母さん,ちゃんと学校行事にも参加できるからね。今まで寂しい思いをさせてごめんね,譲吏」

お母さんは勤めていた会社を辞め,専業主婦になった。


今までずっとあたしのために仕事を頑張ってくれていたお母さんにも,ようやく安らげる場所と時間ができたのだ。


あたしの本当の父親はあたしが生まれてすぐ,交通事故で亡くなってしまった。

それ以来,お母さんはずっとあたしを1人で育ててきた。


きっとすごく大変だったと思う。


だから幸せそうな今のお母さんを見て,あたしもすごく嬉しかった。


こんな幸せがいつまでも続けばいい…


本当にそう思っていた