おじさんがこっちに近づいてくる。


ゆっくり…ゆっくりと


そしてポケットから拳銃を取りだし,あたしに銃口を向ける。


カチッ

おじさんが引き金を引けば,あたしの人生は終わる。


(お母さん,もうすぐ会えるよ)


あたしの心の準備はすでにできていた。


なのに


「くっ…」


おじさんはあたしに銃口を向けただけで,なかなか引き金を引こうとしないのだ。


それどころか,手がものすごく震えている。


「…どうしたの?殺さないの?」


「………っ」


カシャーン


拳銃がおじさんの手を離れ,床に落ちた。


「だめだ…私には…できない!」


おじさんはガックリとうなだれた。