「ん…」


目を覚ますと,あたしは知らない部屋にいた。


今のは夢…?


紫藤に嗅がされた薬のせいでまだ頭がボーッとする。

(ここどこ?)


あたしとお母さんが前,住んでたボロアパートとちょっと似ている。


紫藤は?


辺りを見渡すが紫藤の姿はない。


すると


ガチャ


誰かが入ってきた!


「起きていたんだね…」


紫藤よりもずっと歳上で,なんだか冴えないおじさんが現れた。


全然怖そうには見えないけど,なんか…すごく疲れた顔をしている。


「おじさん…誰?」


「………」


何も答えてくれない。


「…あたしを殺すの?」


「えっ?」


「いいよ,殺して。あたし,お母さんのところに行きたいから」


このときの言葉に嘘はなかった。


あたしは生きる希望を完全に失っていた。


それに


「あたしが死んでも悲しむ人なんて誰もいないから…」