あたしが叫んだのと,お母さんが紫藤にたどり着いたのはほぼ同時だった…


お母さんは紫藤を刺してしまった。


どうしようどうしよう


あたしの声に気付いたお母さんがゆっくりと振り向いた。


「晶さんが悪いのよ」
とでも言うのだろうか?


しかし


お母さんからの言葉は全く別のものだった。


「逃げて!!穣吏!!早…く…」


それがお母さんの最後の言葉だった。



あたしの目の前でお母さんは倒れ,床に真っ赤な血が広がった。


そう


刺されたのは紫藤じゃない


お母さんの持っていた包丁には誰の血もついていない。


刺したのは紫藤。


護身用に隠し持っていたサバイバルナイフで自分が刺される前に,お母さんを刺したのだ!!!