怒りが込み上げてくる

こんな男が父親になるくらいなら,貧乏でもよかった…

今になってようやく気付いた。


紫藤の本性を知った今,もう離婚という選択肢しかない。


あたしはそう確信し,荷物をまとめようと自分の部屋へ向かった。


そのとき


「許さない許さない許さない!!」


「おい,やめろ!!百合!!」


バタバタバタ

ガシャン


一体なにが起こったのだろう…?


あたしは足を止め,再びリビングに戻った。


(お母さん!!)


あたしは目を丸くした。


そこには包丁を握りしめて,紫藤に襲いかかろうとしているお母さんの姿があった。


このままじゃヤバい…


お母さんを止めなきゃ!!


だが,次の瞬間


(!!!)


お母さんが紫藤めがけて走っていく。


紫藤は覚悟を決めたのか,その場から動かない。


「止めて!!お母さん!!!」



あたしは叫んだ。