それからというもの,紫藤は仕事を口実に度々,深夜に帰ってくるようになった。

どーせ,あの女と会ってるに決まってる。


だって会社のお偉いさんが,わざわざ残って仕事をするわけないでしょ?

それも何度も…


ドラマの見すぎかもしれないけれど,仕事を口実にすれば女は何も言えない。


紫藤もそう思っていたのだろう。


そして今朝も,手のつけられていない昨日の夕食が捨てられていく…


「どうせ捨てるなら,最初から作らなきゃいいじゃん」

そう言うあたしにお母さんは


「いいのよ。お腹が空いたときに食べてくれてたら」


と優しく笑いながら,残り物を片付けていた。


そんなお母さんを見ていたらとても紫藤が浮気しているなんて言えない。


ただ黙っていることしかできなかった…