「お母さんは座っていてよ。お茶がいいかな?」

「そうね。お願い」

 母親は目を細めて微笑む。

 今祖父母は田舎で暮らしている。元々祖母の実家がある地に戻っているのだ。

 母親が身を粉にして働いてまでここに留まってくれているのはあたしのためなのかもしれない。

 大学は選択肢が多いほうが何かと便利だし、女優になりたいなら都市部のほうがなにかと便利だからだ。

 あたしは急須の中のお茶の葉を取替え、湯のみにお茶を注いだ。そして、母親に差し出す。

「ありがとう。忙しいのに悪いわね」