「いいの。いいの。これくらいは平気よ。眠れば明日にはまた元通りだから」

 彼女はゆっくりとした動作で立ち上がった。

「日曜日、友達と出かけてきて大丈夫かな?」

 あたしは千春に言われたとおり、伯父に会いに行くのは伏せておく。

「いいわよ。お金はいる?」

「大丈夫。そんなにかからないから」

 母親の名前は平井真知子といった。彼女は目を細め、首をかしげる。

「分かったわ。楽しんでくるといいわ」

 本当は千春の伯父に会うことを話したかった。しかし、千春がああ言うということは本当に合格の確率が低いのだろう。

 母親に似ているあたしは多分女優になるのに一番必要な華を持っていないような気がしたのだ。

 それはある意味致命的な問題なのかもしれない。