「どうして人は人を傷つけるのだろう。中傷しても、なにもいいことなんかないのに」

 あたしはうめくようにそう呟いた。

「でも結局、そうやって人を蹴落とした人が強いんだよ。何もかもそうだと思う。

僕はまた二十年しか生きていないけど、それでも分かるから。

世の中はそんなものだから」

「そうだね」

 否定はしない。正しく生きることはどんなことなのかも分からなくなる。

「でも、やれるだけ頑張ろうと思う」

 迷いのないますっぐな瞳をしていた。

「杉田さんは覚悟ができたの?」

 彼は頷く。

「一生続けるかなんて分からない。でも、今やりたいから続ける。それでいいと思うから」

「今、やりたいから?」

「そう。今、しないといけないし、今やらないといけないこと。それが僕にとってはこれだから」