「でも途中から優しくなったような気がしないでもないかも」

「戸惑っていただけだと思うからね」

　彼も苦しんでいたのだろうか。母親と同じように。

　彼の子を身ごもって一人で育てた母親と、自分よりもはるか年下の女の子を好きになって、それでも忘れなかった父親。

　二人はどんな気持ちで互いに会い、あたしと接していたのだろう。

　二人のことを考えると、とてももどかしくて切なかった。

　千春は母親のようにあたしを抱きしめた。

　彼女はあたしのちょっとした迷いに気づいたのだろう。

　彼女はあたしと父親のことを知っていて知っていて、知らない振りをしていたのだろう。

「伯父さんはあなたが娘だからじゃない。あなたの才能を認めているのよ。あたしを認めてくれたのと同じようにね。 陰口しかいえない人は無視したらいい。

でも、分かってくれる人はいるから。

あたしもあなたの演技が好き。だからあなたを最終的に選んだの。それだけは覚えていて。あたしはあなたのファン一号なんだから」