「映画が終わったら、少し休むといいよ。そしたらお兄ちゃんとの誤解も解けるかもしれないし」

「そうだね」

 でも、木下さんがすぐに行動を起こさないと間に合わないかもしれないとも言われた。

 あたしがどうするか決めるリミットは映画の公開前後だ。

「あたしは京香がお姉さんなら嬉しいよ。でも、京香が康ちゃんとつきあうならそれはそれでいいとも思う。お兄ちゃんの何倍も康ちゃんは優しいから」

 彼を好きな彼女の言葉があたしの胸に染みる。

 本当は自分が傍にいたいはずなのに。

「千春は嫌じゃないの?」

「何が?」

「あたしと杉田さんがキスとかしたりすること」

「だって仕方ないでしょう? でも京香以外なら嫉妬しちゃうかもしれないけど、康ちゃんをこの映画に誘ったのはあたしだし、仕方ないよ。うん」

 千春は明るい笑顔を浮かべていた。

 そう思いこもうとしているのでなければいいと思うけど。

 彼女は強いけど、弱い気がした。

 あたしはそれ以上、何も言わなかった。

 言ってはいけない気がした。