彼女は何か感じ取ったのだろう。

 その場にうな垂れた。

「あたしはそう思っていた。お兄ちゃんは京香のことが好きだって。ごめん。あのとき、あなたをおろしてくれるように頼むべきだったね」

 あたしは首を横に振る。

 あたしはこの役がやりたかった。

 だから、きっと嫌がったはずだ。

 千春のせいじゃない。

「本当にごめん」

 彼女の目から涙がこぼれる。

「気にしないで」

 千春のせいじゃないし、もし、千春の言うことが当たっていても彼は本当にあたしのことが好きなはずはないから。

 それでいい。

 そのまま受け入れようと思ったのだ。

 それがあたしの人生なのだと思ったから。