彼女は自分の目に涙が浮かんでいることに気づいていないのかもしれない。

「多分、好きなのかなって気づいたのは、本当に最近だったから。昔、京香に好きな人がいないって言ったのも嘘じゃなかったの」

 あたしは千春の頬に触れた。

「昨日、変なこと言ってごめんね。忘れて」

「そんなことないよ。だって、京香の気持ちも分かるから」

 彼女がこんな強い思いで彼のことを好きなのに、あたしはそんな軽い気持ちで彼女に言うべきではなかった。

「あたしはまだ好きか分からないから。でも、すごく話しやすくて、一緒にいると安心できて」

「その気持ち分かるよ」

 千春はにっこりと微笑む。

「でも、あたしはまだ」

 彼のことがやっぱり忘れられないから、と言いたかった。

 千春はあたしが何を言いたいのか分かったようだった。