あの前後に千春からその話を聞いた。でもどっちが先だったのだろう。

「見てってのは実際に会ってじゃない。何かビデオを見たとか言っていたわ」

「ビデオ?」

 千春がそんなものを撮っていたのだろうか。

「文化祭のやつとか聞いたな。学校から借りたとかなんとか。監督にも見せたらしいわ」

「あれって借りれるの?」

「じゃないの? 杉田君に見せるくらいだから」

 全く知らなかった。というか一言言ってくれればよかったのに。

 自分で見る勇気はなかったけど。

「彼女、主役の二人は自分が認めた人しか嫌だって言っていたのよ」

「そうなの?」

 信じられなかった。

 もしかすると千春があそこまで一生懸命だったのは杉田さんのためだったのだろうか。

 でも彼は乗り気でなかった、と。

 一体なにが何だか分からない。