でも昔の彼女がそうだったという話だったのかもしれない。

「最初はね、あなたがきちんと演じられるか分からなかった。逆に彼の足を引っ張るんじゃないかって言われてね」

 彼女もある意味、沢井ひろみと同じような気持ちだったのかもしれない。

「でも、あなたを見ていて分かった。彼らはそんな子を求めていたんだって」

「そんな子って?」

 彼女は首をかしげると、唇に右手を当てた。

「無垢な、本当に少女だと思える女の子かしら。綺麗さとか華やかさとかではなくて、あどけなさや優しさが必要だったんだって」

「あどけなさ? 童顔ってこと?」

 でも水絵さんはどちらかといえば、前者だった。

 彼女はくすっと笑う。

「そうじゃないわ。外見や作ったあどけなさじゃない。内面から出てくるような少女らしさとでも言うのかしら」

「よく分からない」