そして、自らの前髪をさらっとかきあげた。

 彼女の視線はあたしではなく、彼女の足元に向けられている。

 その彼女は寂しそうで、見ていると切ない気持ちになってきた。

「私もね、千春や杉田君と一緒なのよ」

「なにがですか?」

 あたしは突然の言葉に事情がのみ込めなかった。

「私も昔、彼女たちと同じ世界にいたのよ」

「そういうことですね」

 彼女の言葉の意味が分かった。

「結局続かなくて止めたわ。でも一応二十歳まではいろいろやっていたの。あなたがやっている役をやりたくて監督に頼み込んだこともある」

「そうだったんですか?」