「ノート貸してくれてありがとう」

 果歩はそこで彼をあえて見ない。

 ノートを自分で返そうともしない。

 彼に歩み寄るタイミングを伺っている。

「あなたって変な人よね」

 そこで困ったような照れたような笑みを浮かべる。

 冷たく蔑んだような瞳。

 そんな彼の瞳を見て、最初は憤りを感じていた。

 でも、そんな彼の瞳を見て、放っておけない。そう思っていたのだ。

「何が?」

 吐き捨てるような言葉。

 果歩はその表情に切ない気持ちを募らせる。

 なぜ彼はそんな言葉を投げかけてくるのだろう。

 そんなに自分が嫌いなのだろうか、と。