「案内するよ」

 あたしはそう言うと、歩いていこうとした。

 さっきまでいたはずの男の人の姿がどこにもなかった。

「藤井さんは?」

「用事があるらしくてさ。さっき出て行った」

「そうなんだ」

 いろいろとやることがあるのかもしれない。

 木下さんも忙しいようだったから。

 あたしは彼を彼の部屋に案内した。

「杉田さんの家ってどんな感じ?」

「普通の家だよ。多分、果歩みたいなね。やりたいことはやらしてくれるし。尊重してくれるから」

「そっか。あたしの家と少し似ているね」

 彼は目を細めていた。

 もう直ぐ夕食だった。