その言葉とともに現れたのは監督だった。

 彼は千春を見て肩をすくめる。

 彼女は彼から何かを言われる前に言葉を綴った。

「いいでしょう?」

「かまわないが、きちんと帰れよ? 君まで留年するとあいつに申し訳ないからな」

「分かってますよ」

 あいつとは千春のお父さんか尚志さんだろう。

「じゃ、部屋に行くね」

 千春はそう言うと、階段を上がっていく。

 あたしは千春がいなくなって、彼女に撮影場所を見に行くか聞けばよかったと気づく。