その二日後、弘から電話がかかってきた。どこかで写真を見たらしい。 

 大々的に報道されているわけでなかったので、誰も見ないことを願っていたのに最悪だ。

「お前、せっかく化粧しているのに、顔が引きつっているけど」

 彼はからかうような口調であたしに告げた。

 あたしの脳裏に数日前の記憶が鮮やかに蘇る。

 どうして忘れたい記憶ほど鮮明に残ってしまうのだろう。

 私の脈が速くなる。

「言わないで。忘れたい記憶のナンバーワンなんだから」

「今からそんなんでどうするんだ?」

「慣れるはず」

「頼りねえな。本当」

 電話機の向こうで彼が笑うのが分かった。

 彼は何かを思い出したのか、小さな声を上げた。