「そう。あなたは杉田さんみたいな人が好きなの?」

 あたしの脳裏に彼に言われた言葉が蘇った。

 生まれて初めてあたしに告白してくれたのが彼だったのだ。

「そんなことないよ」

「もしかして、千春さんのお兄さんみたいな人が好きなの?」

 あたしは言葉につまる。

 母親にそんなことを言うのは照れくさかった。

 それに何度も絶縁状を叩きつけられた人を好きだと思うのはおかしいのかもしれない。

「でもつきあうことはないから」

 それがあたしが言える精一杯の答えだった。

「無理はしないでね」

 彼女は何かを感じ取ったのか、それ以上は何も言わなかった。

 母親はあたしができるだけ成宮秀樹と関わってほしくないと思っていることだけは分かった。