千春は頬杖をつき、肩をすくめている。

 あたしは昨日の話を彼女に一通り済ませた。

 今は放課後で教室の中には誰もいない。

「じゃあ、伯父さんの言ったとおりだったのかあ。よくそんな変な意味が分かったわね」

 彼女は事情が納得できないようだった。

 気持ちを取り直したのか、いつもの調子であたしに話しかける。

「お母さんの希望はあるの?」

 昨夜は聞けずに、今朝、母親に聞いてみた。

「好きに決めなさいってさ」

 帰ってきた答えはそれだけだった。

「京香は?」

「何でもいいかな」

 正直、昨日はそれどころではなかった。

 どうして彼が知っていたのかそれが知りたかったのだ。

 千春はノートを取り出し、そこにゆっくりと名前を記していく。

「橘、美咲?」

「そう、橘は何となくあたしの好みで。美咲はね、美しく咲き続けてねってことで」
 あたしはその言葉に顔が赤くなる。