「そう……なの?」

 そんなこと初めて聞いた。

 そこまで母親が考えて名付けてくれたとは思わなかった。

「でも、簡単に他の人に気づかれたら面白くないから、ちょっと捻ってみたのよ」

「捻りすぎ。絶対に分からない」

 あたしの胸がどくんと鳴った。

 そしたら、どうして彼は知っていたのだろう。

 普通分かるわけがない。

「そうでしょう? 絶対に誰にも気づかれない自信があるの」

 彼女は得意げに言った。

 どうして。

「同じことを言った人がいたの」

 母親の肩が震えた。

「誰?」

 彼女の言葉さえも心なしか震えている気がする。

「成宮監督」

 彼女の顔に悲しみが宿るのが分かった。

「そう。似たことを考える人もいるものね」

 彼女はあたしに顔を背けると、それだけを口にした。

 彼女の背中はそれ以上あたしに追及されることを拒んでいるように見えた。