しばらく経って、あたしと杉田さんは千春に呼び出された。

 千春はいつものように明るい笑顔を浮かべていた。

「これが正式な脚本だよ」

 千春はあたしと杉田さんに脚本を手渡す。

 あたしは中身を確認した。

 各所の細かいシーンが変わっている。

 彼女の伯父がそんな変更を後から加えたとは思えなかった。そこである結論にたどりつく。

「これってもしかして」

「そう。父親が書いてくれたの」

 千春は頬を赤くして、まるで子供のような笑顔を浮かべていた。

「連絡取れたの?」

 千春は何度も頷く。

「京香たちの映像を撮ったのもこのためなの。そのビデオを持って、伯父さんが会いに行ってくれたの。近いうちに戻ってきてくれるって」

 その直後、確かに彼は一週間程度留守にしていた。それはそのためだったのかと気づく。

 彼女の目には涙が浮かんでいる。

 彼女が子供のときに出ていってから、彼はそれ以降戻ってこなかった。

 そんな彼にどんな心境の変化があったのか分からない。あの映像がどんな影響を与えたのかも理解できなかった。

 でも、千春がそうやって嬉しそうにしていると、あたしも嬉しくなってきた。