「ガス台が綺麗だからですよ。こまめに掃除をするようには見えないし」

「意外と鋭いね」

 杉田さんは苦笑いを浮かべていた。

「あたしが家事をしているからかもしれないですね。できるだけ自炊したほうがいいですよ。栄養も偏るし」

「だよね」

 杉田さんは苦笑いを浮かべている。

 あたしは彼の赤い頬を見て、彼が熱を出していたことを思い出す。

「今日はゆっくり休んでください。しばらく傍にいますから」

 あたしは彼の額の上にタオルを載せた。

 杉田さんは目を細めていた。

「ありがとう。でも帰ってもいいよ。送ってくれてありがとう」

 完璧に見えていた彼にもこんな普通の人のようなことがあるところに、あたしはなんとなく安堵していた。