彼の家はそこから三十分ほどのアパートだった。

 あたしは鍵を預かり、家の中に入る。

 彼の部屋はあたしの予想に反して散らかっていた。

 もっと何もかも完璧にしているタイプだと思ったからだ。

 あたしは彼をベッドに寝かせる。

 あたしは彼の額に触れた。

「やっぱり熱あるよ」

「情けないな。きちんと体調管理しないといけないのに」

 彼は呻くようにそう告げた。

 あたしは部屋の中を見渡した。

 本などが各所に置いてあるが、流し台は綺麗だった。ガス代にもほとんど汚れがない。

 あたしはそこで一つのことに気づく。

「もしかして料理とか苦手なんですか」

「あまりしないかな。どうして分かったんだ?」