「年を取れば丸くなるっていうから丸くなったのかもしれないけどね」

 彼は肩をすくめると、微笑んだ。

 そのとき、扉が開き、成宮監督が入ってきた。

 彼は鍵をあたしたちに渡した。

「この下のフロアを好きに使ってくれてかまわないよ。千春に渡してもらうつもりだったんだ。どうせなら今渡しておいたほうがいいと思ってね」

「ありがとうございます」

 あたしはその鍵を落とさないようにバッグの中に閉まった。