「それは人によるよ。僕の父親は無口だからね。成宮監督も無口で、口を開けば怒鳴るイメージしかなかったけど、人は変わるんだろうね」

「それっていつ頃の話ですか?」

 あたしが初めて聞く話だった。

「五歳くらいかな。初めての映画でさ、ほんのチョイ役だったけど」

「え? 映画に出てたの?」

「ほんのチョイ役だよ。そのときに千春と出会ったからさ。言ってなかった?」

「初耳です」

 千春が嫌がっていたらしい子役の時代に、今でもつきあいがあるような友人を作っていたとは思わなかったのだ。

「それでそのときに何度か会ったけど、すぐ怒鳴るし、きついこと言うし、意味が分からないしで散々だったよ。

それだけ真剣だということなのは分かるけどね。あのときは鬼だと思っていたよ。目を合わせるだけでも嫌だったから」

「意外なようなそうでないような」

 あたしが彼と最初に会ったときのイメージのままならそうだっただろう。

 でも、今の彼のイメージからはちょっと程遠い。