もっと怖い人だと思っていたのに。

「今日はご機嫌ですけど、何かいいことでもあったんですか?」

 杉田さんは苦笑いを浮かべながら彼を見ていた。

「何もないけど、気分転換にどうかな、と思ってね」

 千春が言いそうな言葉だった。

 案外血は争えないのかもしれない。

「そう言えば渡したいものがあった。持ってくるよ」

 彼は何かを思い出したのかそう言い残すと、部屋を出て行ってしまった。

 あれくらいの年の人とは学校の先生以外とは今まで関わったことがない。

 お父さんがいたらあんな感じなのだろうか。

 あたしは漠然とそんなことを考えていた。

「あんなもんですか?」

「何が?」

「あたしには、お父さんがいなくて、あれくらいの年の人とは今まで関わったことがないから。あんなにテンションが高いものなのかな、って」

 彼は肩をすくめる。