「くれるの?」

「あげない。自分で入手しなさいよ」

 あたしは苦笑いを浮かべた。

 彼が羨ましかった。万に一つの可能性が未だ残されているからだ。

 あたしにはそんな可能性がもうないのだから。

「あたしも行こうかな」

 あたしが通うはずだった大学をなんとなく見てみたかったのだ。

 そこに行けば彼を遠くから見られるかもしれない。

 そんな気持ちがなかったといえば嘘になる。

 あたしたちは相談した結果、一度家に帰って着替えることにした。そこまで遠いわけではなかったのが幸いした。弘とそんなところに行くのは微妙な気持ちではあったが、千春と一緒には行けなかった。