風が次第に冷たくなっていく。

 尚志さんとはたまに会ったりしている。千春とは付き合っているんじゃないかとも言われたが、実際そんな話になったことは一度もない。

 彼はあたしを妹の友達としてみているような気がしていたのだ。

 映画の話もあれ以降は聞かなかった。あれから千春もその話題に触れることもなかった。

 あたしも触れなかった。

 ダメだったから何も言わないのだと思っていたのだ。

 もしかするとあたしに伝えるタイミングを伺おうとしているのかもしれない。

 あたしの電話が鳴った。

 電話をしてきたのは千春だった。

 もうあたしの中で全てが終わった頃になろうとしていたときだった。

「京香を使うって」

 千春は弾んだ声でそう言った。

「え?」

「だから、京香があの映画に出られるの」

「そんなことって」

 あたしはただ千春の言葉に戸惑うだけだった。

「あとはお母さんに話をしないとね。許可を得ておかないといけないし。後は伯父に会わないといけないと思うけど大丈夫?」