「キスくらいしたらよかったのに」

「そんなことできるわけないでしょう? つきあってもないのに」

 あたしはあくまで小声で彼女に告げた。

 なんとなく千春が自分の兄に送ってきたのはそんな内容のメールだったのはないかと思えてきた。

 そう考えると尚志さんの態度にも納得がいく。

「つまんないの」

 千春は何を期待していたのか肩をすくめる。

「どうぞ」

 尚志さんが三人分のお茶をテーブルの上に置いた。

「ありがとう」

 千春は明るい声でそう言うと、ガラスのコップに手を差し出した。