だから嫌な気はしなかった。

 優しいからいろいろ気にしてしまうのだろう。

「千春遅いよな」

 尚志さんが困ったように言った。

「心配なんだ」

「そうじゃなくて、何か嫌な予感がさ」

 そのとき尚志さんの携帯が鳴った。彼は携帯を確認すると、顔を引きつらせた。

 彼は眉間にしわを寄せると、呆れたような笑みを浮かべる。

「全くあいつは」

 千春からのメールのようだった。

「何?」

「多分ものすごくくだらないことだから」

 彼はそのメールの内容を教えてくれなかった。


 しばらく経って玄関が開く音が聞こえてきた。

「千春だろうな」

 尚志さんは立ち上がる。あたしは本を床に置いて、尚志さんの後をついていく。

 リビングにはスーパーのビニール袋を小脇に抱えた少女が立っていた。

 千春はあたしたちを見ると、そこからアイスを三本取り出した。