「それって、彼女が芝居をやめたからってことですか?」

 尚志さんは頷いた。

「実際そんなことはないとは思うけど、俺は父親じゃないから本心は分からない。だから、必要以上に守らないといけないと思ってしまうっていうか」

 なんとなく尚志さんが言い訳をしているように聞こえてきてしまった。

 あたしにそんな言い訳をする必要もないのに。

 兄弟のいないあたしにはわからないけれど、きっとそんなものなのだと思うから。

 かまったり、かまわれたり、そんな関係が羨ましい。

「でも私は一人っ子だから兄妹とかって羨ましいですよ。千春に恋人ができたときにでもきちんと子離れというか妹離れをしたらいいんじゃないですか?」

「それって俺がシスコンみたいだな」

「実際そう見えますからね」

 それは彼を責める言葉ではない。

 それも含めてあたしは彼のことが好きだった。