「傘持っていないのに、雨が降ったんでしょう? お兄ちゃんがびしょびしょで帰ってきて驚いちゃった。

 あたしの脳内で昨日のことが蘇る。

 頬が熱くなってきた。

「お兄さん、何か言ってなかった?」

 あたしは顔が赤くなるのを実感しながら千春に聞く。

「お兄ちゃん? いつもどおりだったよ」

 彼女はアイスをなめながら、首をかしげる。

 彼にとってその程度のことだったのだ。

 あたしにとっては一大事なことだったけど。

 彼女の瞳が面白いものを見つけたように微笑む。

「何かあったの?」

「何もないよ」

「アヤシイ」

 彼女は悪戯っぽく微笑む。

 兄妹揃ってあたしをからかっているのだろうか。

 何だか恥ずかしくなってきた。

 あたしは強引に会話を切り替えることにした。