《Qクラスの諸君…》
画面に映されたのは団先生だった。
《まず初めに…きみたちも驚いたかと思うが、そこにいる金髪の子は新しく編入したQクラスのメンバーだ。》
団先生のことばにあたしはフフンと鼻で笑いながら、メガネ帽子を見る。
メガネ帽子のあの屈辱的な顔…ほんとウケるわー。
あたしがクスクスとわざと笑うとメガネ帽子は、あたしからキッと目を逸らし、気にしてないふりをしながら画面に目を戻した。
《今回諸君にやってもらうのは殺人事件の捜査だ》
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―――――
「ここのビルだ!」
「ここって勝手に入っていいとこなの?」
「大丈夫だろ!ほら入るぞ」
「はいはーい;」
「ユイ…」
「え?」
誰かに声をかけられ振り向くと、声の主はメガネ帽子だった。
「その…さっきはごめん」
そう言ってあたしに手を差し出してくる。
「俺カズマでいいから」
これってQクラスメンバーとして認めてくれたってこと?
自然と笑みがこぼれる。
「うん!ありがと」
なんだー。
第一印象わるかったけど、実はいい人なのかも。
これで4人目。
あとは天草くんだけなんだけど…。なんか話しかけづらいんだよね;
「うー;どーしよ」
「ユイ何1人でうなってんだよ。不審者みてーだぞ」
「うっさい!バカキンタ」
「なっ…バ、バカ?」
「…たしかに」
「おい∑カズマまで;」
「筋肉バカって顔してるもん。キンタって」
「バカが余計なんだよ∑」
「だってバカで……(ズルッ)……うわっ!」
ガシ
「え…?」
「ここ足元暗いから危ないよ」
階段の途中で落ちそうになったあたしをささえてくれたのは、意外にも天草くんだった。
ってかこれって友達になるチャンスじゃない!?
「あ、ありがと」
「…べつに」
「ね、ねえ!あたしユイってよんで」
あたしが突然天草くんの腕をつかむと、天草くんはびっくりした様子であたしを見ると少しして無表情フェイスにもどった。
「あ、な…なんか図々しかった…かな;」
「………」
こうゆうときってなんて言えばいいの?
ごめん…でいいのかな。
友達いたことないからわかんないよ…。
「リュウでいい」
「え?」
「リュウってよんでくれていいから」
これって…
友達ってことだよね?
「うん…!!!!」
――ズキン
「……ッ」
また?
一瞬だけ頭に電流が流れたような感覚。
ただの疲労ならいいけど。
ねえ…」
「え?な、なに?」
いきなりリュウから話し掛けられて、自然とあたしの声が裏返る。
「そのチョーカー…。アンティーク物じゃない?」
リュウはそういうと、あたしが首に付けている黒の革生地のベルトに金のプレートがぶらさがっているチョーカーを指差した。
「え、わかんないけど…。誰かにもらった気がする……」
誰だっけ…。
――ズキン
「うちにも昔似たやつあったから。革とか見た感じ本物っぽいし…」
「へえー。そうなんだ」
見ただけでわかるってすごい……。
「それだけだけど…」
リュウはそれだけ言うと、階段を上に昇っていった。
なんなんだろ…
この嬉しさみたいな気持ち
「リュウ!」
あたしは少し深呼吸をすると、数段上にいるリュウを見上げて叫んだ。
「……なに?」
「これからずっとよろしくね!」
これが友達ができた嬉しさなのかな?
それならあたしはいま、すごい幸せだよ。
「………う「あったりめーじゃん」
「キンタ!」
「ユイったら声でかすぎ;」
「ぜんぶ丸聞こえだったって…」
「メグにカズマ…」
「ほんとこのビルが壊れるかと思うくらいでかかったね!」
「え……?」
なに?
キュウ。そこは笑うとこなの?;
まったく笑えないんだけど…;
「………」
ふとリュウを見ると、パチッと一瞬だけ目が合ってすぐに逸らされた。
でもなぜか、不思議とショックな気持ちはなくて、自然とほおがゆるむ。
そのときのあたしは
初めてできた友達が本当に嬉しくて、大切なことを忘れていた。
あのときのあたしは
「あたし」だけど自分じゃない。
あたしは馴れ合いのためにこの学園に入ったんじゃない。
あたしは…………
~To Be Continue~
よくおとぎばなしじゃ
お姫様は
王子様からのキスで
目覚めるっていうけど
現実は
そんな甘いもんじゃない
act.02
魔法が解けるとき
「ねえリュウはさー。なんでこの学校入ったの?」
あたしとリュウはあの岡田律子が殺害された現場にきていた。
…というより、あたしが勝手にリュウについてきたと言うべきか。
「……なんで?」
「なんでって気になったから」
「……別に意味はないよ。じゃあユイはどうなの?」
「あたし?」
そういえばなんでこの学校入ったんだっけ…?
―ズキンッ
「……ッ」
まただ。
記憶があやふやな部分を思い出そうとすると、頭に鳴り響く頭痛。
「……ユイ?」
「え?あ、ごめん」
頭を抱えてふりむくとリュウがあの無表情な目であたしを見ていた。
「ず、頭痛がね;」
「あ…そう」
あ、そう…って。
もう少し心配したりとかさあ;
ちょっと期待しちゃったあたしがバカでした。
「てかリュウったらなんでこんなとこ来たの?」
ここにくるってことは密室の謎を解きたいんだろうけど..
カタン…
そのとき、リュウが誤ってペイントマーカーの入ったケースを落とし、玉が床に散らばった。
「あーあ;リュウったら…早く拾わなきゃダメじゃ………え?」
なぜか玉が奥の部屋に吸い込まれるように転がっていく。
これって…
「ねえリュウ…もしかしてこの部屋……」
「ああ…」
密室の謎は解けた…
あとは犯人がわかれば..
「リュウ!早くキュウ達に連絡しなきゃ」
「ああ。キュウに電話しな…っ……ッ!!!!!」
リュウの言葉どおり、キュウに連絡しようとケータイを開いていると、ガタンという音といっしょに視界の片隅からリュウが消えた。
バッと顔をあげると、リュウの口をふさいでいる警備員の格好をした男。
「リュウ!!??」
ユイの声が聞こえる…
起き上がらなきゃ…
でも‥
力が入んない……
そこで急に意識が途切れた。
「ねえあなた誰!?リュウに何したのよ」
リュウが意識を失ってその場にはあたしと警備員の格好をした人のみになった。
「クックッ…さすが完璧な催眠術だ」
「は?なに言ってんのかわかんな
掴み掛かろうとしたその手を男に掴まれ逆に動けなくなる。
力で大人に勝てるわけがなく、あたしはあっというまに壁に追い詰められた。
「離し…ッ」
「そろそろお目覚めの時間だ」
パチン!!
男が何かを言って指をならすと同時に急にあたしの視界が真っ白になった。
頭が痛い…
たくさんの映像があたしの頭に流れ込んでくるのと同時に、頭が割れそうに痛くなった。
「……ぐ…ッ…いた…」
なに?
この映像は全部あたし?
だってあたしこんなこと知らない。
なにがなんだかわからな……
パチン!!
「………!!」
男がまたパチンと指をならすと、あたしの視界が突然はっきりなった。
そうだ…
さっきの映像はあたし。
そしてあなたは
「申し訳ございません。ケルベロスさん」
「クックッ…ごくろうさま。今日のリュウ様はどうだったのか報告をしてもらおう。
冥王星の飼い猫さん?」
「はい。仰せのままに」
あたしは主人に忠実な飼い猫。
夜の世界を生き続ける。
~To Be Continue~
夜は長い。
あたしの中はいつも真っ暗だ。
act.03 飼い猫