「ねぇ……智」




さっきの光景を見てしまって考え込んでいて口を開かなかった俺に梓乃ちゃんは小さく名前を呼んだ。




「え?」




ボーっとしていた俺はハッとして返事を返す。




すると梓乃ちゃんは心配そうに俺を見上げて聞いてきた。




「今日……ううん。さっきから智しゃべんないよね。何かあった?」




やっぱり。




俺、子供だ。




梓乃ちゃんが男と話す事なんか、そんな妬く事なんかじゃないよね。




梓乃ちゃんはやっぱり俺より年上で、そういうところも寛大なんだね。




「……別に何でもないよ」