中に入ると、外観から想像が付いた以上に、高級感あふれる空間になっていた。


大理石張りの、ピカピカに光った床と、キラキラと輝く宝石たちの光に、眩暈すら起こしそうになる。


頑丈に鍵のかかったケースに並べられている指輪に目をやってみる私。


「ゼロが、いち、に、さん、よん・・・ごぉ・・・ろ、ろく!?いいい、いっせんごひゃくまんえん!?」


ありえない金額に驚いて、声を張り上げてしまった私を、周りのセレブや店員さん達が、冷ややかな目で見る。


少し離れた所で店員と話していた柏原が、私を見て、小ばかにしたように鼻で笑った後、

(ア・ホ)

と口だけ動かしたのが見えた。



むっきーーーーーぃ!


あまりにも場違いな自分が哀れで、無償に泣きたくなる。


「お客様、何かお探しですか?」


胡散臭い営業スマイルをにやつかせ、30代後半位の男が話しかけてきた。


「いえ・・・別に。」


居た堪れなくなって、その場から逃げるように離れた。