舞子は自分を落ち着かせようと、さーと同じようにタバコに火をつけた。
思い切り吸い込んで夜空に向かいふーっと吐く。
まだ手は震えていた。

「これは一体どういうことなの?」
舞子はさーに問いかける。
「ここは峠でスピードを求める場所。」
さーはいつものことのように答えたが、舞子には峠とスピードがまったくつながらなかった。
舞子は元彼に一度つれてきてもらったことがある。
しかしそれはバックミラーから市内の夜景を見るためで、決してスピードを求めたものではない。
震える手と高揚感。
もう一度体感したい、と思った。
「もう一度同じのやってくれない?」
舞子は自分でも思いがけないことを発言していた。