最近持ち始めた隆の携帯電話に着信。
“さー”だった。
「…舞子の家……聞いてみる」
隆は携帯電話を耳から離し
「さーが今から峠に行かない?って言ってるんだけど、舞子どうする?」
さーは隆の幼なじみで、産まれた瞬間から親友だと以前隆が話していたのを舞子は思い出した。
舞子はさーとは数回会ったことはあるものの、親しいというわけではない。
何より、隆との大切な週末。
邪魔はされたくない。
でも、ドライブには行ってみたい。
悩んだ末、左手で「OK」のサインを出した。
「舞子行くって。…了解。」
隆は電話を切って舞子の方を向いた。
「30分後にさーが迎えにくるから。あ、スカートはダメだからな。」
「え?スカートがダメってどういうこと?」
舞子は背が低く、パンツが似合わないと思っていたので、外出するときは好んでスカートを履いていた。
服装まで指定してきて、一体どういうことなんだろう?
舞子は腑に落ちないながらも、クローゼットからジーンズを取り出し着替えた。

30分後、さーのR33スカイラインが舞子のアパートの前に到着した。
さーひとりかと思いきや、隆の弟でさーの友達のまっちゃんも乗っていた。
「あ、まっちゃん、こんばんは。」
舞子は自宅住まいの隆の家に遊びに行ったときに会ったことのある、隆の弟のまっちゃんに挨拶をした。
「乗って乗って!」
さーとまっちゃんは一旦車から降りて、舞子と隆をリアシートへ乗せた。
ドライバーはさー。
ナビシートにまっちゃん。
ドライバー席の後ろに隆。
まっちゃんの後ろに舞子。
かくしてこの不思議な組み合わせのドライブが始まった。

R33は舞子のアパートを出て信号を左折、そのまままっすぐに進んでいく。
組み合わせの妙とはよく言ったもので、車内は終始なごやかだった。
流れていくクォーターガラス越しの景色は、地方都市とは言えきれいだ。
「さーくん、これからどこへ行くの?どうしてパンツじゃなきゃだめなの?」
隆、さー、まっちゃんはクスクスと笑いながら
「そのうちわかるよ」
と詳細を説明しない。
舞子は不満に思いながらも、リアシートに身体をうずめ景色を楽しんでいた。