『・・・ごめん』


咄嗟に謝ってみたものの、やっぱり少し罪悪感がある。


梓に対してか、有香に対してか分からない。


ここにこれ以上いたらいけない。
ますます止まらなくなる。


有香に背を向け、歩き出そうとしたとき。


「陸・・・り・・・」


『触るなよ』


俺を呼ぶ有香の声を遮る。
自分でも驚くくらい低くて冷たい声だった。


一気に空気が凍りついたようになる。


『お前が好きなのは俺じゃない、梓だろ?』


気がついたらすでに言っていた質問。


言ったあと少し後悔をしたが、これは俺が本当に有香に聞きたかった質問。


答えなんて、分かってる。
案の定、有香は困ったような顔をして俺を見ている。


・・・何してんだろ、俺。


有香にこんな顔してもらうためにやった事じゃない。

ただ、少しの間だけでも有香に愛されたかっただけだった。


・・・でも、有香にとっては迷惑な話だよな。


俺は振り返ると有香に向かって笑った。
かなり引きつっていたかもしれないけど。


そして『今まで騙して…悪かったな』といった。