「来たかった…って来たじゃない」


有香の声にはどこか戸惑いがあって俺もつられて戸惑った。


『え?』

驚いて間抜けな声まで出してしまった。


来た・・・?


梓と有香がこの海に来たのか・・・?


「あたし達が…別れた場所…」


・・・!!

嘘だろ。


俺は思わず息をのみ、目の前の有香を見た。


有香の顔は歪んで今にも泣きそうな顔になっていた。


そして次の瞬間には有香の頬には一筋の涙がきらりと夕日色に光って俺の心臓をわしづかみにした。


こんな時なのに、


俺はその有香の泣き顔から目を離せなった。


でも、いま、有香は傷ついているはず。