こんなこと、有香が知ったら俺をどう思うだろう?


今俺に向けられている優しく愛しい眼差しが一瞬にして軽蔑へと変わっていくのか?


俺はそれが怖かった。


だから自然と有香の手を引く、自分の手に力が入った。


俺達が降りた駅から徒歩で10分もしないところに海がある。


もうすっかり夕暮れで青い海がオレンジ色に染まっていた。


そしてその夕日の光が有香の顔にも当たっていた。


・・・なんだろう。


有香がどこか懐かしげにこの海を見ているのは。


『俺さ一度お前とここ来たかったんだ』


そんな有香の表情を見ながらポロリと言った言葉。


その言葉で急に有香の表情をがらりと変わった。


大きい瞳をますます開いて俺を見ていた。


その瞳にはどこか悲しげな気持ちが映っている気がした。