「大丈夫だよ、春妃・・・。
春妃は歌が好きなんだろう?
あとは、信じるしかない。
坂本くんは凄腕だから、今は
彼にまかせて堂々とデビューしなさい。」



春妃は顔を覆っていた。



「春妃、顔をあげなさい。」

春妃は静かに顔をあげた。


「夢をつかむチャンスはそこにあるよ。
堂々とまっすぐ前を向いて
春妃ならできる、明るく元気で
周りに気を配りながら・・・・
いつも感謝の気持ちを忘れてはいけないよ。」



「はい。
おじさま・・・。」


春妃の肩は小刻みに震えていた。


「おじさま、なぜ私は震えているのかしら。」


「きっと緊張感だよ。
大丈夫、うまくいくよ。」


「お願いがあります。少しだけ
抱きしめてください・・・・・・。」


春妃は小さい頃から俺にだっこを
せがんできた。
俺が抱くと春妃は体を全部預けて
すぐに眠ってしまう。



「おじさまがだっこしてくれたら
安心するの。」



春妃は俺の胸に顔をうずめた。

俺は少し躊躇しながら
天使の輪が輝く春妃の髪の毛を
優しく撫ぜた。