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「……いってぇっ!」

さわさわと涼しい秋風が吹く病室で、俺の悲痛な叫び声が響く。

ジン、と痛む腕を押さえ
顔を上げると、視界に映った相手を睨みつけた。


「おい、マジで痛ぇよっ!」

「ずっと呼んでるのに起きない颯がいけないんだろ。」

「だからって、もっとマシな起こし方っつーモンがあるだろーが!」



樹は「はいはい」と適当に相槌を打ち、開いていた窓を閉める。


…骨折してる腕を叩くとは、優しさのカケラもねぇ。


未だ痺れて痛む腕を気にしていると、パイプ椅子に座った樹がどこか茶化すように言った。



「どうよ、事故ってみて。」

「…どうって、最悪に決まってんだろ。」

「ふぅ~ん。」


何だか樹の顔がイヤラシイ。



ニヤつく樹に痺れを切らし

「さっきから何だよ!」

と声を荒げると
樹は至って冷静に、でも意味ありげに笑ったまま口を開いた。



「まさか、颯と由井が付き合うとはねー。」


…やっぱり、その事か。

わかってたとは言え、そこをモロに突っ込まれると気恥ずかしい。

だから俺は敢えて素っ気なく答えた。



「…悪いか。」

「いんや、別に~。」


あぁーっ!
カンに障るヤツ!!!